(「受講記(1)」からの続きです)
受講日当日、実家で朝食の準備を終えた後、愛車で途中の駅に向かいました。
研修終了後、実家に戻るのでは(両親の夕食が)遅くなるし、遅い時間に帰宅することで父の不穏を呼ぶ行動をするのはまずいし、自宅や実家からだと鉄道網の組み合わせが悪く、遠回りになるので、自宅と実家の中間点にある便利のいい駅に向かったのです。
とりあえず、実家の方は夕食の準備も済ませたので一安心です。
さて、研修会場に着いてみると、かなり多くの参加者がいる様子です。
配られた資料の中に参加者名簿(名前と、参加資格だけが明記)があったのですが、120名定員の募集に143名の参加者がいるようです。
そして、参加者の内訳は、地域包括支援センター職員をトップにケアマネ、施設職員などの介護業界の人が大半で、その他も行政職員や(病院などの)介護相談員、医療従事者がそれぞれ1割程度、私のような(ボランティア等)は僅か6名でした。
まぁ、指導者になる人ということですから、ボランティアが少ないのも当然ですね。
ちなみに、そのボランティアで興味深かったのは某コンビニチェーンの本部の方が参加していたことです。既に車内には千人単位の認知症サポーターがいて、最終的には末端の店舗の従業員まで取得させたいので、講師資格を取得してこいと言われたのだとか。ただし、業務としてではなく、有休を取得しての参加という形だそうです。
さて、実際の研修の方ですが、まずはキャンペーンビデオを見るところから始まりました。
ところが、このビデオ、ちょっと引っかかります。認知症の人への対応として誤った対応と正しい対応を説明しているのですが・・・
1.買い物をする(認知症の)老女が代金620円を支払おうとして、小銭入れを広げる。
2.小銭入れのアップ。たくさんの硬貨が見えるが、老女はしばらく眺めた後、それを閉じて1万円札を出して支払おうとする。
3.「小銭がたくさんあるのに・・・」と不思議そうな店員。
ここまでは同じですが、誤った対応の例として素直に1万円札を受け取り、お釣りを渡す行動を、正しい対応例として「小銭を持ってますよね。ちょっとここに広げてみてください」とお盆を差し出し、その上で620円を選り分け、代金としていただき、残りを財布に返すという行動を取り上げています。
う~ん、ちょっと無理がありませんか?
そもそも、店に買い物にきている時点で、その人が認知症だと判断できることなどあり得ません。
小銭を確認してからお札を出すことも、崩したいと考えているかもしれないし、最初から認知症扱いするのは失礼すぎますよね。
続いてのカリキュラムは、「認知症を理解する」というテーマで、介護サービス事業所(訪問リハビリ/訪問看護/訪問介護/デイサービス/居宅介護支援事業所/在宅介護支援事業所/地域包括支援センターなど)を併設する医院(内科・小児科・精神科医)の院長の講話でしたが、この医師が問題外の低レベル。
登壇するなり、裏方の県職員に「スライドは何枚あるの?え、44枚?じゃ、(2時間だから)1枚2分ちょっとで話せばいいのね」などとやっています。
つまり、スライドを用意したのは県職員で、講師のくせに、現場に来るまで一つも見ていないということなのですから。
講義を始めてからも「本当に認知症を理解しているのか?」という言動が・・・。
まずは、「認知症なんてものは、アリセプトが効くんです。飲み始めれば効果が出ます」と宣ってくださる。
おいおい、それはおかしいでしょう?アリセプトの適用はアルツハイマー型など一部で、脳血管性などの病因による認知症には効果がないことがわかってきていますし、初期段階での効果が期待できると言われているだけなんですけど・・・。
これでは、医学的知識を持たない受講者は認知症を誤解してしまいそうです。
さらに、調子づいて「家族もしっかりしなくちゃ駄目だ。うちのデイサービスなどでも、せっかく家族会を作っても辞める人ばかりで・・・」と家族に対する不満まで言い出す始末。聞いていて腹が立ってきました。
しかも、態度もよくない。百歩譲って、座ったまま講義するのは許せても、膝組みは講師の態度ではありません。
この低レベルな講義は2時間も続き、昼休みまでが長かったのだけが印象的でした。
午後の研修は、認知症サポーター養成講座を運営するためのグループワークです。認知症家族会の人が指導してくれたのですが、このグループワークは濃かったです。
私たちのグループは地域包括2名、デイサービス相談員1名、養成職員1名とボランティア2名という構成なので、私たちボランティア系の視点が介護保険関係者には新鮮に映ったようです。
一方、もう一人のボランティア系参加者、実は冒頭で先に紹介したコンビニ本部の人間だったのですが、「地域包括支援センター」がどういう組織なのかを知らなかったのに驚きました。
話を聞いてみると、「実は(私は)受講資格を満たしていなかったのですが、(知人経由で)県担当者に根回しして、受講させて貰った」と言います。でも、社内で千人単位の「認知症サポーター」を育てていこうという立場だそうですから、受講する意義があったのは間違いありません。
ただ、考えてみれば当然なのです。彼は社内で「認知症サポーター」育成には関わってきたので、本制度そのものについての知識は持っていたようですが、老人介護には関わっていなかったので、介護保険制度のことは知らなかったのです。
あらためて考えてみれば、「認知症サポーター」制度は「介護保険」制度とは全く接点がありません。
ですから、「地域包括支援センター」についても、その他の介護サービスについても全く予備知識がなかったのも当然なのです。
ここでハタと気づきました。私が認知症サポーター制度に魅力を感じなかったポイントがここにあったのです。
認知症がどのような病気なのか、どう接していけばいいのかということを学んだとしても、どのような介護サービスを利用するのがいいのか、そのためにはどのような手順を踏まなければならないのかなどを学んでいなければ、認知症の人(や介護家族)をサポートすることなどできません。
その点では、「キャラバン・メイト」養成研修の受講資格に、介護関連の経験や資格を求めていることも理解できました。
まぁ、そんなこんながあり、午後はあっという間に過ぎていき、定刻の5時には修了証を受け取り、登録は完了しました。
これで晴れて、「認知症サポーター養成講座」を開催することができます。
私の住むK市は年間150回近く講座を開催しているようですが、実家のあるM町はと調べてみると、なんと今年度の開催予定はゼロ!(参照)
老人の多い町ですし、サポートしなければならない対象が多いだけに、介護保険の使い方と併せて講座を開催すると良さそうな気もするのですが、財政的に苦しい町なので、消極的なのでしょう。
今回の研修で理解したことの一つが、メイト主導型の講座もあるということ。実は、これをやりたかったのです。講座の運営主体は自治体となりますが、実際にはメイト自身が企画し、自治体に提案して開催することができるのだとか。
実際の講座では、テキストもある程度自由度があるようですし、ポイントを外さなければいいので、独自視点のアドバイスもできそうです。
一般の人に対して本当に必要なのは、認知症を知って貰うことだけでなく、いざ家族の認知症に気づいたとき、慌てずに済むためのアドバイスをすることです。そのためにも介護保険制度も知って貰う必要がある訳です。それがなければ、意味がありません。そこに、私が教えることの価値が生まれます。
ちなみに、開催規模は数人程度でもよさそうなので、草の根的な活動で、啓蒙活動をしていきたいと考えています。
当初、無意味な資格だと思った「認知症サポーター」制度ですが、キャラバン・メイト研修を受けたことで、その(本質的な)意義も見えてきた気がします。おそらく、末端の「認知症サポーター」講座を受講していたなら、気づけなかったと思います。
どうせなら、資格を無駄にせず、前向きに活用していこうと思った話でした。
コメント
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