現在、私は父(はじめ3人の認知症家族)の言葉に耳を傾けることはありません。
どうせ、まともなことは言っていないし、それを聞いて、まともな説明をしても理解して貰えることはないし、それを記憶していてくれることもありません。つまり、それほど重要なことではないからです。
問題行動でない限り、本人の意志を尊重するのは当然ですが、問題行動については、どう説明すれば、納得させられるかを考え、それに沿った説明をするように変えたのです。正しい説明でないので、周囲の目には、まるで小馬鹿にしているようにも映るようですが、本人が理解しやすく、結果オーライならいいじゃないかという開き直りでもあります。
それに、冷めた目で相手を見ることで、暴言にも腹が立たなくなってきたのも利点でした。さらにいいのは、自分自身が落ち着くことで、次の一手を打ちやすくなることでした。
ところが、mixiのコミュニティやメッセージで、介護家族の方といろいろ話をしていると、認知症家族の言葉を、文面通りに受け取り、真正面から対応しようとしている方が多いんですね。
いや、実は、私自身もかつては他の方と同じでした。当初は「父の性格だから、こういうことを言うんだ」と思っていましたし、認知症と判明してからも、キチンと説明しようとしたりしていたのですが、「暖簾に腕押し、糠に釘」の反応に、イライラすることも多かったんです。
しかし、「運転免許の更新で徘徊騒ぎ」や「猫に鈴を付ける...」で確信を持ちました。“認知症”介護では、嘘も方便なんですね。
この場合、最初の“嘘”で納得させられなくても心配はいりません。新たな“嘘”で再挑戦すればいいだけなのです。
私は認知症の父について「ミスターカップ麺」と表現することがあります。誘導に失敗したら3分間待って、新たな気持ちでやり直せばいいからです。テレビドラマのNG特集ではありませんが、OKが出るまで、同じシーンをやり直すだけなのです。それが通ってしまうのが認知症なのです。
相手がマトモでない(※)以上、正しい説明をしても無駄なわけで、それをやっていると言うことは、介護対象者に振り回されていることでしかないわけです。
「主導権を取り返し、上手にコントロールする」ことが、認知症介護のコツなんですよね。とりあえず、その瞬間だけ納得させられれば、それでいいんです。「相手の心を興奮させないこと」「思いこんでいることを納得させること」が最優先、その次に「最適な介護に向けた行動を促す」ことです。そのためには、(周囲の健常者の目には小馬鹿にしたような言動に見えても)嘘をつくことが一番手っ取り早いし、正しい対応だと思います。
罪悪感など感じる必要はありません。嘘も方便です。どんどん、嘘をついて、(介護対象者に)穏やかに暮らして貰いましょう!
嘘をつくのが難しいという方は、天然系キャラを演じてみてください。相手の言うことを真正面から受け止めないということですね。それだけでも、随分気が楽になるはずですよ。v(^^;)
※
「相手がマトモでない」と書きましたが、かなり端折った表現です。(本心から、そう考えているわけではありません)
認知症介護で疲労しないための考え方という視点で書いているので、この部分へのツッコミは不要です。後述の「介護職のための「認知症」対応術」もお読みください。
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